2006年04月09日

インド・マイクロウォーターシェッド調査(3)

Pogadavali集落での「成功例」

地元NGOのBREDSがこの集落で2000年から活動しています。最初はSHG(Self Help Group=自助グループ)の組織化から始めました。BREDSが関与する前、女性たちはいかなるプログラムにも参加したことがありませんでした。BREDSともう一つの地元NGOであるCSSSは、ソムニードの指導のもとに、女性たちがプログラムへ参加し、リーダーシップを発揮するよう促していきました。

そしてCSSSはBREDSと協働して2002〜2003年、日本の外務省・草の根無償プログラムとしてこの集落に砂防ダムを建設しました。その時、コミュニティ全体が砂防ダムの計画造りから実施まで積極的に参加しました。建設時には村人が皆で15,000ルピーを出資して完成後の維持管理用の基金にしました。この額はSHGに貸し付けられて、SHGメンバーによって運用されています。

基金拠出に加えて村人たちはボランティア・ワークを組織して、年に3〜5日、チェックダムの浚渫と土手の強化を行ってきました。毎年2月終わりか3月初めには、すべての世帯がボランティア・ワークに参加して、砂防ダムか溜池の修復・維持管理を行います。今回我々がこの集落を訪れた時は、ちょうど砂防ダムの浚渫が2日前に終わったばかりでした。我々は、砂防ダムが建設されて3年が経過した後でも村人たちがこうしたイニシアティブを発揮しているのに大変驚きました。我々の嬉しい驚きはまた、それまで訪れた3つの地域で出会った村人たちの依存や無気力を目にした後では格別でした。ここではまた、男性よりも女性の参加が大変活発だったのが印象的です。

浚渫済み砂防ダム.JPG

Pogadavali集落で維持管理されている砂防ダム
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2006年04月02日

インド・マイクロウォーターシェッド調査(続)

あいあいネット・長畑です。前回2月に「インド・マイクロウォーターシェッド調査」について記事を途中まで書いてから、ずっと続きをアップできませんでした。年度末にかけて締め切りのある仕事が続いて、それに加えてJICAの短期専門家としてインドネシアに来てしまった(3月5日から)ためです。皆さまどうもすみませんでした。

ようやく時間ができたので、本当に遅ればせながら、前回の続きを書きます。前回、「インド・アンドラプラデシュ州で見た小規模水利資源管理が、全くうまくいっていなかった」ということを書きました。それはいったい何故なのか。大きく分けて、2つの要因があると考えられます。

1)プログラムの入り方の問題
私たちが訪ねた小規模流域の山村には、政府やNGOによる複数の「水利資源管理」プログラムが入っていました。それぞれが砂防ダムや用水池などを作っているのですが、それぞれの間には関連性や調整はまったく見られませんでした。そして何よりも、各プログラムは、村人にとってその目的や意義を全く理解されないまま、単なる「砂防ダム」や「用水池」建設プログラムと化していました。つまり、「ここに砂防ダムを5つ造る」と上から決められて、一部の住民がその建設委員会を作って工事を実施する、という形なのですが、「そもそも何故砂防ダムなのか」「水利資源管理は何のために必要なのか」「この用水池はどういう機能をもつのか」といったことは、住民の間で何も理解されていませんでした。そして水資源管理と密接な関係をもつ、山林の管理は、多くの地域で壊滅的な状況にあり、禿げ山が拡がってます。

2)少数民族の側の問題
一方、こうした「水利資源管理」プログラムの対象となる山村に住む少数民族の人たちは、その多くがもともと「山の民」で、移動焼畑農耕を中心としてきた人たちです。それが、1970年代以降の政府による定住政策の結果、山裾に集落を作り、水田農耕を始めるようになりました。「(山で作る)雑穀のほうが美味しいけれど、米のほうが簡単にできる(食べられる)」というのが、村人たちの考えです。急速に水田が広がり、山は換金作物を作るようになりました。しかし、そうした村人たちの間には、「水利をどう管理するのか」「水資源をどう守っていくのか」に関する伝統的な知恵を発展させるよりも、「近代化した社会にどう対応するか」のほうに忙しく、無秩序に山間の平地を切りひらき、田んぼを拡大してきた、というのが実情です。

この他にも、「小規模水利資源管理」の主体と想定されている、村落パンチャヤト(村落自治組織)がうまく機能していない、という問題もあるようです。

ともかく、こうした状況の中で、住民が主体となりつつ、持続的で、かつ人々の生計を向上させられる「水利資源管理」はいかにして可能なのか。それについては、一つの集落でヒントを見つけました。

(続きは来週に)
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2006年02月20日

インド「マイクロ・ウォーターシェッド」調査

今月初めから11日まで、南インド・アーンドラプラデーシュ州・スリカクラム県で実施された「住民主体のマイクロウォーターシェッド(小規模流域)管理に関する調査」に参加してきました。これはJBICからの委託で特定非営利活動法人・ソムニードが実施するもので、「あいあいネット」の長畑が調査メンバーとして協力しました。団長はソムニード代表理事の和田信明氏。ソムニードインド駐在事務所の原康子代表や同事務所のラマ・ラジュ氏ほか現地スタッフらとともに、南インドの東側「東ガーツ山脈」の中にある3つの郡の4つの村を歩き回り、村人たちと話をしてきました。

マイクロ・ウォーターシェッドとは、主に丘陵・山岳地帯において平野に流れ込む前の中小河川の流域のことを指します。そもそもウォーターシェッド(流域)とは降った雨がある川に流れ込むまでの地域のことですから、マイクロ・ウォーターシェッドは山の稜線から谷底まで、そしてその川が平野部に出て行くまでの間の一帯を意味します。「マイクロ・ウォーターシェッド管理」とは第一義的には水利管理(ダムや堰、ため池などの取水構造や灌漑用水路等)を指しますが、水は降雨が森林に蓄えられて流れ出るものですから、森林や土壌の保全・管理も対象とし、さらには自然資源と人工構造物の維持管理にあたる人々の組織や制度まで包含する考え方です。

Gottupali WS (Web用).JPG

(典型的なマイクロ・ウォーターシェッドの景観=Gottupalli村にて)


言い換えるなら、マイクロ・ウォーターシェッド管理とは、山間の村が自然資源をいかに持続的に管理しつつ、暮らしをたてていけるか、という「住民主体のコミュニティ開発」と繋がることでもあり、かつそれだけでなく、下流域も含んだ水資源・自然資源をいかに保全・有効活用していけるか、という大きな命題を含んだものでもあるのです。

さて、その「マイクロウォーターシェッド」管理ですが、我々が今回現場で目にしたものを一言で表すなら、「過去のプログラムの遺物・廃墟」ばかりが目についた、といえるでしょう。

村人インタビュー(和田さん)(Web用).JPG

(村人に話を聞く和田団長)


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posted by あいあいネット at 14:31 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 調査研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月30日

南インド・アンドラプラデシュ州の小規模水利資源管理調査

2月1日〜10日まで、南インド・アンドラプラデシュ州・スリカクラム地区で、住民主体の小規模水利資源管理(Micro Watershed Management)に関する実態調査に参加してきます。この調査は岐阜県高山市に本拠を置きインドを中心に活動するNGO「ソムニード」がJBIC(国際協力銀行)からの受託調査の形で実施するもので、「あいあいネット」の長畑が専門家(参加型開発)の一人として加わります。

ソムニードが長年活動に取り組んできた、インド・アーンドラプラデーシュ州スリカクラム地区では、インドの他の州と同様に、従来の天水利用によるため池を中心にした潅漑から、膨大な地下水を搾取する深掘り井戸による潅漑が数十年続いています。同地区は山岳少数民族の人口の多いところで、従来は森林利用と農業を組み合わせた(焼き畑も含む)伝統的な、自然と調和した農業が行われてきましたが、近年、平地の米作を中心とした農業へと大転換しつつあります。それに伴って、森林、地下水を含む水資源をはじめ、様々な自然資源の管理は、山岳少数民族の人々によるコントロールを離れつつあります。また森林の荒廃や大量の地下水の消費の開始によって、水資源の急激な減少を招き、数年ごとに起こる干ばつが少数民族の人々の存続、自然資源管理に対して危機的状況をもたらしています。

こうした中で、森林および農地など、すべての村落の資源の管理を包括するような、しかも住民によって管理が可能な、小規模水利資源管理をいかにして実現するかは、緊急の課題となっています。本調査では、同地区の事例研究を通じて、住民主体のコミュニティ開発と持続的な貧困削減を可能とする小規模水利資源管理のあり方を検討し、政府・ドナーおよびNGOによるコミュニティ開発プロジェクトにおける留意点や指針作りに繋げていくことを目指しています。

ソムニード代表の和田信明氏やインド駐在代表の原康子氏は「あいあいネット」活動開始当初からの仲間です。住民主体の共有資源管理を通じたコミュニティ自治を目指して長年インドで活動するソムニードの調査に協力し、「あいあいネット」にとっての学びや、今後のインド・日本・インドネシア間の経験交流に繋げていきたいと考えています。
(長畑誠)

スリカクラム地区の山(ウェブ用).JPG

(写真は2004年5月にスリカクラム地区を訪問した時のもの)

ソムニード:http://www.somneed.org/
posted by あいあいネット at 10:21 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | 調査研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする