2007年02月04日

「マカッサル学」開始!



あいあいネット・マカッサルの松井です。1月26日、あいあいネット・マカッサルの活動のひとつとして、「マカッサル学」の第1回を開催しました。

マカッサルに住んでいながら、マカッサルのことをどれだけ知っているのか。マカッサルの常識と思われていることを少し掘り下げただけで、実は分からないことだらけだということが自覚できる。そこからもっとマカッサルのことを知りたいという興味や欲求が湧いてくる。

そうすると、自分たちの住む地域に対する愛着と関心が増し、自分たちの足元を見つめながら、「自分たちの住む地域をどうやってよりよいものにしていくか」を自分のこととして考えられるようになってくる。そんな流れができるといいのではないか。こんな素朴な発想から「マカッサル学」を提示しました。

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導入として、「マカッサル名物のチョト・マカッサルはいつ頃から誰が始めたものなのか」「マカッサルにはチョト屋が一体何軒あるのか」「通りの名前になっているアブドゥル・ダエン・シルアとはどのような人なのか」といった質問を投げかけ、出席者の興味をひきつけながら、マカッサルの様々なモノやコトを掘り下げて、調べて、それをみんなで共有するというプロセスが重要なこと、「学」といっても先生が教える学問ではないこと、皆がお互いに学び合ってマカッサルのことをもっと知っていく過程でマカッサルをもっと好きになること、こうした流れを総称して「マカッサル学」と呼びたいこと、を述べました。

招待状を配ったわけでもないので何人来るか見当がつかなかったのですが、蓋を開けてみたら当日の出席者は約100人。近所のワルン(小食堂)にお願いして、チョト・マカッサルを50人分、パルバサ(肉スープでご飯にかけて食べる)を50人分用意して、出席者に振舞い、和やかな雰囲気のなかで、上記のような「マカッサル学」のコンセプトについて話し合いました。

出席者からは、「こんな発想でマカッサルのことを考えたことは今までなかった」という声がたくさん出ました。ハサヌディン大学の先生が興奮気味に語った「ビヨンド・イマジナシ」という言葉が印象的でした。すなわち、自分たちが物事を考える領域というのは限られていて、その領域のなかで想像しようとするのだが、この方法でやると、様々なことに気づき、思い出されることによって、その領域を超えた想像力や理解が生まれてくる、という感想でした。

感想や意見を述べ合った後、毎月最終金曜日の午後8時から「マカッサル学」を定期的に開催することが合意され、次回2月23日に話し合うテーマ探しが始まりました。チョト・マカッサルとか、マカッサルのお菓子とか、ロザリ海岸とか、そういうものが出てくるかと思ったら、「各自が気に入ったマカッサルの場所について語り合ってはどうか」という提案が先のハサヌディン大学の先生から出され、次回テーマは「あなたのお気に入りのマカッサルの場所」ということになりました。

今回は、テーマを決めてそれについて各自が自分でいろいろ調べてきて、それを発表しながらシェアリングをしていくという手法をとることにしました。「地域のことをもっとよく知る」ということの大切さをできるだけ多くの人に納得してもらうことがまず先決で、それも楽しく続けやすい形でセットすることが重要だと考えたからです。もちろん、地域を知る活動には、他にも、その場所に出向いて、地元の人とヨソ者が一緒になって「あるもの探し」をし、それを皆で共有していく地元学的なアプローチがありますが、それは折をみて組み合わせていくことになると思います。

実は、「マカッサル学」と同様の発想で、ゴロンタロのNGOと一緒に「ゴロンタロ学」を提唱することを計画しています。こうして、少しずつ自分たちの地域を見つめなおす動きが各地に広まることで、コミュニティ開発や地域開発における主体性の大切さが認識されてくることが期待されます。

地域に伝わってきた民話・伝承、伝統芸能、儀式などがインドネシアでも急速に忘れられ始め、自らに関わるアイデンティティが消えていこうとしています。それに気づき始めた人々が少しずつ増えてきているのですが、具体的な行動はまだその広がりを見せてはいません。その一方で、根っ子の薄れた人々は自分たちのアイデンティティの拠り所を宗教や種族といった外見や形式的なものに求めようとし始めています。

様々な人々がともに暮らすコミュニティ自体に目を向けること、しかもそれが排他的ではなく、地元の人もヨソ者も一緒に楽しめるような形で進められていくこと、こうしたことがコミュニティ開発や地域開発だけでなく、ホリゾンタルな対立や紛争を回避し、外からの思想や教義を強制しようとする動きに対してコミュニティが自律的に対処できる能力を高めていくことにも繋がると考えます。

そうしたコミュニティが互いに尊重しあい、学び合いながら結びついていく・・・そんなイメージを描きながら、「マカッサル学」をしばらく試みていきたいと考えています。


(松井)
posted by あいあいネット at 02:45 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | マカッサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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