2006年08月04日

PKPMウィークリー報告(7)



今週は東ヌサトゥンガラ州クパンを訪問しました。今回のPKPM専門家としての赴任期間中2度目の訪問です。PKPMのマスターファシリテーターであるヤンゲワ氏やPKPM地元専門家であるファリー氏が運営する地元NGOのIncrease(ウィークリー報告(4)参照)が、地元NGOのスタッフや行政官を対象に研修をしていたので、それを視察するのが目的の一つ。もう一つは、前回やり残した、YAOというNGOへのインタビューでした。今週の報告は、YAOについてと、Increaseのヤンゲワ氏のインタビューについてです。

まずYAO。Yayasan Alfa OmegaというこのNGOは、1985年に教会のバックアップで設立されたミッション系NGOです。東ヌサトゥンガラ州では、というかインドネシア全体でも、老舗の大手NGOの一つと言えるでしょう。現在は専従スタッフ29名ですが、つい最近までは60名以上でした。これは最近の「分権化」方針で、地方ごと、テーマごとに小さなNGOを設立して分離していく方針をとったためです。現在でも東ヌサトゥンガラ州のほぼ全域をカバーしています。

この団体の運営を一言で表現するなら「手堅い運営」と言えるでしょうか。毎年、各セクションごとに計画と予算を立て、半年に一回の全体会議でその進捗をチェックしながら進めていきます。もちろん各セクションでは定期的なミーティングで情報共有がなされています。それらの会議はすべて記録に残されています。予算管理体制もしっかり作られています。そして資金的にも、研修施設の運営とマイクロファイナンス機関による貸し出し益等で、経常経費を全て賄うことができています(年間経常経費は約4億6000万ルピア、自己財源収入は年間6億ルピア。ちなみに年間活動費は全体で40億ルピア)。(1円=約78ルピア)

YAOが作られた時は、スハルトの独裁政権時代の真っ最中でした。YAOは「解放の神学」や「パウロ・フレイレの機能的識字」の理論を中核に、農村貧困層の組織化に取り組み、政権からはかなり弾圧を受けたようです。それでも、キリスト教会の支援、OXFAMからの運営支援などを受けながら、農村で地道な活動を続けてきました。

しかし今はスハルトは失脚し、民主化・地方分権化の時代です。YAOも創設時のリーダーから、次の世代に中核が移りました。そうした中で、いまYAOはその活動の向くべき方向性を見失いつつあるようにも思えます。「パウロフレイレの考え方は今でも生きていますか」と聞くと、「はい」とのこと。しかし、極端な階層格差が存在し、抑圧もひどかったラテンアメリカで生まれた理論や実践手法が、もともとフラットな社会で資源も豊富にある東ヌサトゥンガラ州の村落でどこまで有効なのか。それについて、彼らも明確な意識を持っていないようです。そして現在やっている活動は、Good Governance関連で村長や郡長の研修をするかと思えば、WFPの緊急支援でビスケットを大量に配ったり。その方向性が不明瞭です。そして団体の雰囲気も、(クパンの人たちは総じて騒がしくなく落ち着いているので、そのせいとも言えますが)活力に乏しいように感じます。

一緒にインタビューしたファリーの「NTTで、YAOにかわる新しいNGOモデルを作らないといけない」という言葉が印象に残りました。

そのIncreaseですが、今回、ヤンゲワにインタビューして、新しいチャレンジについて聞くことができました。

ヤンゲワは、Increaseの研修や調査活動を、もっとコミュニティに根ざしたものにしたい、と考えています。PKPMに参加するようになってから、「調査にしても研修にしても、コミュニティの人たちがOwnershipを持つようなものが理想」と考えるようになったとのこと。そして具体的には、今回のIncrease研修で対象地としたTilongダム近くのオエナシ村を、Pilot Fieldとしたいそうです。

オエナシ村はダム建設に伴い水田が失われ、村域は保護林に指定され、近年は近郊開発の余波で投機目的の土地買いが始まっています。そうした中、旧来のコミュニティを保ち、山の資源に依存した生活をしてきた住民たちは、大きな変化に直面しつつあると言えます。ヤンゲワは、研修を通じてこの地域の課題を浮き彫りにし、住民による課題解決をIncreaseがFacilitateするプロセスを作っていきたい、と考えています。いわばオエナシ村がLabo Siteとなるわけです。

前回クパンに来た時は、若手スタッフからの聞き取りでIncreaseのマネージメントについてがテーマだったのですが、今回、Increase創設者の一人で幹部であるヤンゲワから、将来に向けての方向性を聞くことが出来ました。そこには、「現場に根ざし、住民のアクションと結びついた研修や調査をしたい」という明確な意識がみられます。ファリーの「YAOにかわる新しいNGOのモデル」が作っていけるかどうか、今後が楽しみですね。それに、彼らの考えていることは、「住民に根ざし、アクションに繋がる調査研究や交流をしたい」と考える我々あいあいネットの方向性とも繋がるものがあります。

というわけで、今回のクパン訪問も実り多きものでした。

来週は今回の赴任最後のフィールド訪問、ゴロンタロ州です。南ドラマヨ村の山の上で、LP2Gの合宿形式の「活動戦略・計画作り」会議に参加してきます。

(長畑誠)
posted by あいあいネット at 14:43 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | インドネシアPKPMからの報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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