2006年07月31日

PKPMウィークリー報告(6)



7月最終週は南東スラウェシ州の州都クンダリに出張でした。クンダリは新しい町で、周辺の村落も含めて「開拓地域」という印象の強いところです。人口密度が低く、森林資源・海洋資源も豊富にあり、コミュニティの団結力も残っているところです。PKPMはここでも地元の行政官やNGO関係者による活動を支援していますが、今回の私の仕事は、例によって地元NGOを回っての聞き取りが中心でした。その中で、SINTESAという東部インドネシアでは老舗のNGOが大変興味深いので、以下に紹介します。

<SINTESA>
SINTESAはユニークな生い立ちを持っています。もともとはアメリカの国際NGO「Project Concern International(PCI)」の保健プロジェクトとして始まり、その一環として1991年に地元NGOが設立されたものです。プロジェクトのスタッフだったフグア、ムクリス、マンスール、アハマッドの4名が設立者となりました。彼らが掲げたスローガンというか意思表明というのが「Hidup mati diSintesa」(SINTESAとともに生き、SINTESAとともに死ぬ、というような意味でしょうか)でした。つまり最初から、団体として自立してやっていこう、という明確な意思があったと思います。これは、90年代初めという時代を考えると、かなり珍しい例と言えるかもしれません。

独立した当初、PCIは「5年間は資金援助を継続する」と約束していましたが、実際にはそれは反故にされました。そこでSINTESAは最初から、資金獲得に苦労することになりました。PCIから引き継いだ車2台を売り払ったり、フグアは英語の先生をやったり、他の2名はWarungを開いたり、ともかく生き残りに必死だったようです。(ちなみにこの時期、フグアには公務員にならないか、というオファーがあったそうですが、それを断ったそうです)。PCIは資金援助はしなかったものの、他のドナーに紹介だけはしてくれて、イギリスやカナダのドナーがつくようになりました(給水プロジェクトや薬局作り、地元NGOの能力育成等)。ここで重要なのは、当時ドナーは「NGOを使ってプロジェクトをする」という考えは持っていなかったので、SINTESAの側からプロジェクト企画書を作ってドナーに提案してきた、ということです。

SINTESAはその後順調に発展し、94年には今の場所に土地を買って事務所を作り、2001年にはトレーニングセンターを建設、2002年には農業試験所兼研修施設をコナウェ県に作りました。そして同じ2002年からはグラミン銀行方式によるマイクロクレジットプログラム(BANTESA)も開始しています。活動の殆どは自主的に企画してドナーに提案したものです。彼らのドナーへの提案能力が優れているのでしょう。そしてまた、将来を見越して投資する(報酬の一部を団体に戻して貯金して土地を買う、研修センターやマイクロクレジットは収入源にもなる)という意識があることもポイントです。

現在は給水プロジェクトとマイクロクレジットが中心で、スタッフが84名います。このうちで完全な専従は5名のみで、あとはプロジェクトごとにリクルートしている契約スタッフです。但し給水プロジェクトは受益者が払う設備維持費がSINTESAに入るので、またマイクロクレジットは利子が入るので、それぞれ継続性が高く、40〜50名は継続して雇用されているそうです。ちなみにSINTESAの自己収入は年間約2億6000万ルピア、それに対して経常支出は年間2億4000万ルピアほどなので、団体としての継続性・安定性は充分あると言えます。(自己収入源は研修センターの貸し出し、農場のトラクター等の貸し出しと作物の販売、それにBANTESAとは別にマイクロファイナンス機関を持っていてそこからの収入)

SINTESAの団体としての成功の要因は、1)設立者4名のコミットメント(いまフグアは県知事になりましたが、県知事報酬の10%をSINTESAに納めて、県知事を辞めた後はSINTESAに戻るそうです)、2)ドナーの支援を継続的に獲得する力、3)最初から自己資金を作る意思があったこと(貯金をする、収入になる活動をする)、でしょう。今後は農業関連の事業を拡大する等して、さらに自己資金率を増やしていきたいそうです。

もう一つのポイントは、団体として成長しよう、という意思がスタッフに浸透していることだと思います。大きな決定には若いスタッフも関与しますし、プロポーザルもどんどん作らせているそうです。そして毎月の課ごとのミーティング、年間計画作りも共同で行っています。またDirectorの給与であっても、全員で承認した規定に沿っているそうです。他の多くのNGOでは設立者は自由に自分の報酬を決めているようですが。。。

あえて今後の弱点を挙げるなら、第二世代をどう育成していけるか、だと思いますが、それにしても、SINTESAの例は他の若いNGOにとって、いろいろな意味で勉強になります。NGOの能力育成というのは、それぞれの団体ごとに設立の経緯や背景が異なり、決まったパターンにあてはめるのが難しいのですが(もちろん会計管理やプロポーザル作り等、ある程度の技術的なスタンダードは必要ですが)、いろいろな例を学ぶことで見えてくるものがあるでしょう。相互交流・学習の機会を作っていければ、と思います。

(あいあいネット・長畑誠)
posted by あいあいネット at 16:48 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | インドネシアPKPMからの報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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