2006年07月14日

PKPMウィークリー報告(4)



長畑です。今週は地方巡業の谷間で、ジャカルタとマカッサルそれぞれのPKPM事務所での活動が中心でした。
前回はゴロンタロ州で活動する地元NGOのLP2Gをとりあげて、その課題を考えましたが、今回はもう一つ、東ヌサトゥンガラ州クパンで活動するINCREASEという地元NGOを紹介します。

INCREASE(Institute for Cross Timor Economic and Social Development=ティモール地域経済社会開発研究所)は2001年、主に東ティモール地域で調査研究や開発の実践に関係していた人たちにより、クパンで設立されました。ご存知のように東ティモールがインドネシアから独立したことで、一部の人たちはインドネシア側である西ティモールに移住しており、INCREASEの設立者たちもそうした人たちが中心でした。ただ、当初はボランティア的な活動が主でしたが、2003年になり、設立者の一人であるファリー・フランシス氏がそれまで働いていた地元NGOを辞めてINCREASEを中心的に運営するようになり、団体としての発展が始まりました。

ファリーが前のNGOを辞めたきっかけは、JICAの研修で日本に行き、中田豊一さん(神戸在住、参加型開発研究所)や和田信明さん(岐阜県高山市に本部のあるNGO・ソムニード代表)と出会ったから、と言います。特に和田さんのところに行った際、
「僕はコミュニティのことを実は何にも知らなかったことに気づいた」
そうです。そこで帰国してから、コミュニティに根ざしたNGOをやりたい、と思い、INCREASEに本格的に取り組むようになったとのこと。
INCREASEは、他のNGOと比べ、次のようなユニークな特徴をもっています。

(1)ボランティアを巻き込む
VIP(Volunteer Increase Program)と名付けられたこのプログラムは、主に学生や卒業直後の若い人たちを対象に、INCREASEの活動にボランティア・スタッフとして加わってもらう、というもの。ボランティアをシステムとして位置づけているNGOはインドネシアではまだまだ数少ないです。活動内容は、セミナーや研修の事務局役として会場の準備や記録、報告書作り、といったことが中心です。若くてやる気のある人たちの学習と活躍の場を提供する、という意味で大変興味深いです。ただ、日本と違うのは、ボランティアの多くが「職探し中の若者」である点で、高等教育を受けた人たちが容易に職につけない、というインドネシアの現状が背景としてあります。

(2)独自の事業を展開しようとしている
多くのNGOが各国援助機関やその意をうけた地方政府のプロジェクトを「受託」するだけの「下請け」的活動が中心であるのに対して、INCREASEはさまざまな研修プログラムを自分たちで企画し、NGOや政府機関に「売り込む」という活動をしています。特にPKPMの研修を通じて得られた知識や技術をもとに、参加型開発やコミュニティを主体とした分析と活動作りに関する研修を企画して、参加者からお金をとって運営する、というスタイルをとっています。研修といえば「ドナーからお金をもらって参加するもの」というイメージの強いこの国にあって、「お金を出してでも参加したい」研修を作っていく、というのは大きなチャレンジです。

(3)自己財源作りに取り組む
ドナーからの資金だけに頼ってはいけない、という観点から、自己財源をどう作っていくか、意識的に試行錯誤しています。当初は仲間からの寄付を募る、という形が中心でしたが、今は物品販売などについても手を伸ばしています。

(4)女性が積極的に参加
私が出会う東部インドネシアNGOに共通する課題として、女性の参加が少ない、ということが挙げられます。それに対してINCREASEは有給スタッフの殆どが女性ですし、ボランティアも7〜8割が女性です。そして彼女たちが実に積極的に参加しています。東ヌサトゥンガラ州はクリスチャンが多い、という土地柄もありますが、INCREASEにはムスリムの女性たちも加わっています。

今回の訪問の際には、「INCREASEの組織としての強さは何か、どんな弱点があるか」をスタッフ・ボランティア・理事全員で議論する場に参加しました。「目指す目的がクリアである」「サポーターやパートナーがいる」「皆のコミットメントがある」「創造性」「透明性」等が強さとして挙げられた一方、「スタッフが継続しない」「幹部が自分の仕事に忙しすぎる」「自己資金が少ない」「成果が広報されていない」といった点が課題として挙げられました。私の印象は「団体の現状と課題について、関係者皆がしっかり共有できているな」というもの。スタッフ・ボランティア・理事がこの団体に対するオーナーシップをもち、自分たちで考え、議論しながら進めていく、という点が、大変好印象でした。

一方で、INCREASEの弱いところは、「自らの目指す目標や自分たちの考え・能力を社会にアピールしていく」ことと思われます。「コミュニティの現実を知り、コミュニティの人たちのイニシアティブで活動を作っていく」という大きな「哲学」を持っているのですから、調査研究・研修機関としてのINCREASEは、それを強くアピールしていく必要があると思います。そうでないと、結局はドナーや地方政府に「使われる」だけの存在になってしまうのでは、と感じます。でもこれは、何もインドネシアのINCREASEだけの問題じゃなくて、日本で活動する我々NPO・NGOにとっても言えることでしょうね。
posted by あいあいネット at 11:37 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | インドネシアPKPMからの報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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